2022年5月25日水曜日

他人という集団の中の個人という自分



まだ予断は許さないとはいえ、コロナウイルスの感染拡大は落ちついてきているようです。コロナの影響で、ここ数年は人数を集めての研修など控える企業も多かったのですが、徐々に通常通り行う企業も増えていています。特に5月は新人研修や年度初めのメンタルヘルス研修などが集中します。

企業へのメンタルへルスの仕事では研修だけでなく個人面談(相談)も行っており、その相談内容としては個人的な悩みや仕事のやり方などもありますが、やはり多いのが職場の人間関係です。
職場や学校など集団の場での人間関係というのは、どうしても悩みの種になってしまうものですね。

少し前に寺沢武一の漫画『コブラ』みたいな某芸人さんが、人間関係について
「他人の集合体なのだから、わかり合えない人が居ても自然なこと」
との発言が名言とされていましたが、同意したくなるほど皆さん思うところがあるのでしょうね。

職場など組織の人間関係について、こんな理論があります。

社会心理学者の三隅二不二の提唱した『PM理論』では、組織の理想的なリーダーに求められる機能として、
仕事の結果や効率重視の『目標達成機能』と
人間関係を良好に保つ雰囲気を作る『集団維持機能』があり、
そのどちらも満たすことが、リーダーの素養として求められるとされます。
円滑な人間関係というのはそれほど重視されているということですね。

そんな人間関係、リーダー的役割の人が雰囲気づくりを頑張るのは前提として、個々人にも求められるものがあります。
それは『社会性』
社会集団の一成員としてふさわしい性質のことですが、わかりやすく言うなら社会・世間と適応することです。
社会性を逸脱してしまうと、一般社会に受け入れられなかったり馴染めなかったりして集団生活が難しくなってしまいます。

例えば、芸術家の逸話など聞くと「さすが、芸術の才能がある人は普通とは違うのだな」と好意的に見られますが、同僚だと考えるとちょっと困ってしまうのではないでしょうか。

社会で生きてゆくには社会性も必要ということですが、これが難しい。
その難しさの本質は『社会性』と『自分らしさ』の調節です。

『自分らしさ』とは、常識や規範に囚われないありのままの自由な自分の事。
本来なら自分らしさを十分に表現できることが生き物としては理想ですが、集団で生活する場合はある程度の節度が必要になります。
逆に芸術家などは、社会性の欠落そのものが作品の魅力に表れたりするので才能ともいえるのでしょうが。

会社組織で集団で業務にあたる場合は、自由過ぎるのは身勝手や異常性、スタンドプレーになりかねません。
とはいえ、社会性を重視しすぎて自分を押し殺すのも、窮屈だし折角の個性が活かせない。そもそも心の健康に良くない。

そんな『社会性』と『自分らしさ』。
その二つの丁度いい調整・落としどころを探すことが、人生の生きやすさには肝要となります。
とはいえ、そのバランスには決まった正解があるわけでなく、職場の社風、雰囲気やそこにいる人たちの性質、そして個人の性質の兼ね合いによって最適な形は変わる、そんな曖昧なものです。

社会の輪の中に入りつつ自分らしく生きる。極端でなく丁度良い具合を見つけることは難しいことではありますが、会社にとっても、なにより我々個人の生きやすさにとっても大切なことです。


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2022年5月2日月曜日

マスク社会におけるコミュニケーションの難しさ



5月に入りました。世間はゴールデンウィークですね。

特に今年は数年ぶりの行動規制なしの大型連休ということで、各地が賑わっているようです。
感染症対策を図りながらの行楽という、ある意味相反するものではありますが今後はこういったことにも慣れていき少しずつ日常にシフトしていく必要もあるのでしょうね。

そんな中で一つの課題となってゆくのだろうなと感じているのが『マスクトラブル』です。 
要するにマスクを着用するか否かという対立なのですが、これが結構難しいなと思います。
そもそも、唯一の正解がないわけですから。

識者によっても推奨派と非推奨派が居て、更にその条件も様々に説があるのが現状です。
統一された常識がない状態というのは、どうしてもトラブルが起きやすくなってしまいます。

例えば、人間社会で生きている以上は法律を遵守しなければ罰則を受けるという絶対的なルールがあります。とても単純明快でわかりやすい。
法律の不備などの問題点はあるものの、法の存在というのは明確な正義と悪が決めやすく、意見の対立が起きた場合でも法という判断基準が対立をシンプルな構造にしてくれます。

しかし昨今のマスク事情は、都道府県等による呼びかけはあってもそれはあくまでもお願いであり強制力はありません。
その結果、個人の意思や解釈という曖昧さが生まれてしまいます。
お互いに「これが正しい、自分が正義だ」と思うわけですから、明確な善悪がなくどちらかが譲らない限りこの対立は終わってくれません。
そしてこれは、現代のマスク事情で表面化しやすくなりましたが、実はコミュニケーションの本質でもあります。

法に定められていないルールや常識はあくまで個人の主義主張であり、他者と共有できないものも日常に多く存在します。
暗黙の常識という不文律なルールは多々ありますが、それもやはり万人に共通のものではなく、同調圧力による強制という非常に曖昧な位置付けとなってしまいます。

コミュニケーションって難しいですよね。
自分にとっては正しいことでも他者にとっては悪とされることかもしれない。
そこで必要になるのが『譲り合い』や『落としどころ』というこれまた曖昧なものです。
相手や状況、立ち位置によって柔軟に、その都度変化する正解を見つけてゆかなければならない。
特に発達障害の一部の症状では、そういった柔軟性や共感性を必要とする対人的相互関係を築くことが上手くできずに社会生活の生き辛さを感じる方も多くいます。

大切なのは、自分と相手は同じ主義主張・感情ではない、ということを知ることです。
自分にとっては正義でも他者はまた別の正義を持っていて、齟齬があることを前提に、相手を理解しようとしたり自分を理解してもらおうとする努力が必要だということ。
自分の主義主張を他者に強制するという行為は、衝突や対立などのトラブルが起きるリスクを自覚すること。
つまり、社会という枠組みの中で生きている以上、自分目線だけで他者への配慮が足りないとトラブルになってしまいますよ、ということですね。

それを意識して他者と関わることで、自分の行動に責任を持って判断することができるのではないかと思います。
他者と関わるという意味をしっかり意識して、無用なトラブルが起きないようにしてゆきたいものです。

※ちなみに当ルームでは現在、利用者様の安心・安全を保つことも運営管理者の責任として、カウンセラー・クライエント共にマスク着用を許容頂けることをご予約の条件としております。色々なお考えをお持ちの方もいるかと思われますが、当ルームのご利用の際におきましては何卒ご理解頂けますようお願い致します。


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