2020年2月26日水曜日

カウンセリングの対象は誰なのか


心理相談の枠組みは広く、その領域は様々です。
一対一での面談での相談もあれば、一対多人数で行うこともあります。
そして、相談者が悩みを持つ当人ではない場合もあります。
具体的に言うと、親を対象とした児童支援や、夫婦(パートナー)や家族についての相談、悩んでいる方の知人からの相談などがそれにあたります。

「うちの子どもの不登校を解決したい」
「精神疾患を治療中の家族との関わり方」
「うつで休職中のパートナーの励まし方」

そんな主訴をイメージしてもらえればいいでしょう。
これら相談の特徴は、相談に訪れる人がカウンセリングの対象ではない、ということ。
例えば不登校の子どもの相談の場合、親がカウンセリングに訪れる場合などですね。

そんな時、カウンセラーが気を付けなければならないことは、
誰を対象にカウンセリングを行うのか、を明確に関わることです。
先ほどの例の場合は、親なのか児童なのかとなるでしょう。

不登校なのは子供なのだから、当然子どもを対象としたカウンセリングだろう。
そう思われるかもしれませんし、実際親御さんはそう言って相談に来られます。
しかし、カウンセラーが安易にそう思い込むことは危険です。
不登校の子どもに対して悩んでいる親御さんが、心理援助としてのカウンセリングを必要としている、そんな可能性も考えなければなりません。
むしろ、そちらの方が本質としては多いとさえ思います。

そこに気が向かず、今そこに居ない子どもについて分析したり、親の関わり方を指導したり、対策を提案したりすること。
「あなたの間違った関わり方が、お子さんは不登校にしているのですよ。こう関わりなさい」
そんなアドバイスは、例え正論だとしても子どものことで思い悩む親御さんのSOSのサインをないがしろにして、むしろ追い詰めてしまうことだってあり得ます。

そんな時はまず、親御さんの悩む気持ち、どうしてよいのかわからない辛さを扱うことが効果的となります。
つまり、カウンセリングの対象は親御さん自身ということになります。
そうして親御さんの心が癒されて、初めてテーマが子どもに向かうことができます。

とはいえ、親御さんは自分のことより子どもの改善を優先したい気持ちもあるでしょう。その気持ちも無視してはいけません。
親御さんの気持ちにフォローが必要な段階でも、実践的なアドバイスを求められることもあります。
そんな時は、例え親御さんの関わり方に問題がある場合でも、その伝え方に配慮をする必要があります。
なぜなら、カウンセリングは主体的に受けようとしない場合、その効果は極端に薄れてしまうから

例え、子どものためにまずは親の心理面・行動面の改善が必要だとしても、自分の為にカウンセリングを受けることに抵抗を感じる親御さんも多いですし、そもそもその必要性を感じられない場合も多いでしょう。
ですから、伝え方に配慮しながら、親御さんの心を癒しながら、同時に親御さんが自分自身の心の状態に意識が向けられるように関わる必要があります。

我々カウンセラーは、常に心理援助の対象を明確にしておく必要があり、その対象に適した関りが求められます。
自分のことでなく、家族や友達、恋人など周囲の方の相談を望まれているなら、素直にそう伝えて頂ければ大丈夫です。
しっかりお話を伺ったうえで、誰に何をすることが今最も効果的なのか、ということを納得いただけるよう、カウンセラーはちゃんと説明をします。
むしろ、それを整理することを共に行うのが、カウンセリングの場だと思って安心してご相談ください。


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2020年2月16日日曜日

こだわりの理由


唐突ですが、当ルームのカウンセリングルームに常備してあるティッシュは『クリネックス』を使うようにしています。
数あるティッシュのメーカーの中でなぜクリネックスに拘っているかと言うと、
私の敬愛する臨床心理学者であるカール・ロジャーズ(Carl Ransom Rogers, 1902-1987)が心理面談の際にクリネックスを使っていた、という理由があります。

カール・ロジャーズといえば、人間性心理学の代表的な一人であり、来談者中心療法という現在の対話を主としたカウンセリングの基礎を作ったと言っても過言ではなく、アメリカ心理学会によるアンケート調査「もっとも影響力のある10人の心理療法家」では第一位に選ばれたこともある人物です。

そんなロジャーズが自身の理論をレクチャーしているという貴重な映像があるのですが、その中で彼は、カウンセリングに必要な要素というくだりの中で、その一つに『クリネックス』とはっきりと語っています。

とはいえ、なんでもアメリカでは "Kleenex" という一商品名が商標に関係なく「ティッシュペーパー」を意味するほどに定着しているそうで、『ウォークマン』『ウォシュレット』みたいなものですね。
なので、つまりは涙を拭くためのテッシュがカウンセリングには必要だ、ということなのですがね。
それでもロジャーズを同じ商品を使用することで、少しでもあやかりたいということでクリネックスに拘っているというわけです。

さて、カウンセリングの中で何故にそれほどティッシュが重要なアイテムかと言うと、真意として重要なのはティッシュの問題ではなく、『泣ける環境である』ということ。

とは言え勘違いをしてはいけないのが、カウンセリングは泣かせることが目的ではないということ。
確かに泣くと、何やら達成感らしきものを感じることもあるのですが、実際のカウンセリングの質とはあまり関係ないと言えると思います。
大切なのは、自分の悩みや心の奥深くを語る時に、大きな感情が起きます。そうすると自然に涙が出てくるということをロジャーズは言いたかったのではないでしょうか。

涙というと悲しくて流れるイメージがありますが、実は感情が大きく発露した際には涙を伴います。
悲しくて流す涙もあれば、悔しくても涙を流すし、嬉しくて泣けることもあれば、怒りのあまりに泣けてくるなんていうこともあります。
私が思うに、人は大きな感情を表出する際、言葉や表情・動きなどで出し切れない時に涙が溢れ出すのではないかと考えます。

なので、悲しい気持ちにさせて泣かせることが目的ではなく、大きな情動・感情をカウンセリングの中で扱うということが、有効なカウンセリングに求められる要素の一つであると思っています。

当ルームにもたくさんの方がいらっしゃいます。
男性も女性も、年齢も様々です。もちろん相談内容も一人ひとり違います。
そんな皆さんのどのような感情であっても、カウンセリングの空間の中では決して、軽視したり拒んだりすることなく受け止めることをお約束します。

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2020年2月7日金曜日

自己免疫機能を上げて乗り切りましょう


2020年も2月になりました。
最近の話題はなんといっても新型コロナウイルスによる肺炎。
連日ニュースで注意喚起がされていながらも、実態がなかなか見えないことから不安は高まってしまっているようです。

コロナウイルスの話題に隠れがちですがインフルエンザも流行っているようですし、何かと体調管理が気になるこの時期ですが、皆さんも対策されていると思います。

私も職業柄人と接する機会も多いので、細心の注意を払っています。
基本としては手洗いうがいマスク。
マスクは予防というよりも感染拡大予防の側面が強いものですが、それでもできる対策はするに越したことはないと思っています。

そんな物理的な対策に加え、とても重要なのが
ウイルスに負けない体つくり。
つまり自己免疫機能の強化です。

免疫力を上げることで体の恒常性の維持は、新型肺炎だけでなく健康には欠かせないものです。
そして、免疫を正常に機能させるためには自律神経を整えることが大切です。

自律神経には交感神経と副交感神経があり、
交感神経は緊張状態や活動時などに活発になり、末梢神経からはノルアドレナリンが放出され、身体機能の活動を高める役割があります。

副交感神経は、リラックス時に働き、末梢神経からはアセチルコリンが放出され、身体を回復させる機能や内臓の機能を高めます。
そして副交感神経が優位であると免疫機能の向上も期待できます。

つまり、免疫機能を上げるには副交感神経を活性化させることが有効であるということ。
もちろん双方のバランスが極端に崩れると自律神経に良くないので適度にではりますが、現代人はストレスや生活習慣により副交感神経が乱れている割合が高いとされています。

少し科学的根拠からは離れますが、
末期のがん患者が自分の好きなことをしていたらがんが消えた、などのレアケースも免疫機能の強化によるとも考えられますし、
宗教的にも『笑い』というのは魔を払う効果があるとされているのも、関係がある気がします。
経験のある方もいるのではないでしょうか。
心配事や落ち込むことがあり元気がない時に風邪をひいて寝込んでしまったり。
高ストレス状態では体の免疫機能が落ちて体調を崩しやすくなるというのは、身近に実感できます。

そんなメンタル的な対策だけでなく身体的な対策としては、体を温めること。
特に内臓を冷やさないことは副交感神経に良い効果を与えます。

心も身体も整えて、この時期を乗り越えたいものです。

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