2024年3月6日水曜日

感情のコントロールとは



私は心理師という肩書で心理カウンセラーという職業ですから、『心』を扱います。
では心とは何でしょうか。

心理学的には『意識』や『行動』『認知』を通して心を研究してきた歴史がありますが、もっと感覚的なものとしては『感情』と言い換えられるのではないでしょうか。広義として、気持ち、気分なども含めてよいでしょう。

実際、カウンセリングの現場では感情を扱う場面が多くあります。
人は自分の感情が思い通りになってくれずに、日常に支障をきたしたり、人生の生き辛さを感じたりします。

・頭では理解しているのだけれども、気持ちがついてこない。

・ネガティブな感情がいつまでも消えずに辛い。

・特定の感情が大きくて行動が制御できない。

自分の感情にもかかわらず言うことを聞いてくれない状況に困る人は少なくありません。
そんな時、私たちの心の内では何が起きているのでしょうか。

まず前提として、『感情』と『思考』は別で働いています。
『感じる』と『考える』ということですね。
人は、自分が何を感じているのかを思考で理解できている時、違和感なく納得して自分らしくいられます。
逆に、自分の感情を自覚できていない時に、違和感や混乱、アンコントローラブルな感覚に陥ります。

どうしてそんなことが起きるのでしょう。
その答えが、感情という性質にあります。

感情は姿形や質量はありませんが、生き物のようなものです。現象と言った方がイメージしやすいでしょうか。
どちらにせよ、生まれたからには諸行無常の理から外れることはなく、不変ではなく流動的で変化し続けるものです。
悲しみも喜びも怒りも、全ての感情は生まれては消えるを繰り返し、いつかは形を変えてゆきます。
あんなにも悲しかった過去の体験が、今は思い出となって心を乱すこともなくなる。
そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。

ですがその一方で、過去の経験がいつまでも同じ感情で残り続けて一向に消えてくれないという場合もあります。
感情が、同じ状態で在り続けるには理由があります。
それは、感情が全うできていないから。
生まれた感情を終わらせるには、その感情を実感して役目を全うさせる必要があります。

悲しければ、悲しむ。
怒りは、怒る。

当たり前のことのようですが、私たちは意外とそれができていません。
感情を感じることを邪魔するのは、『抵抗』が起きるからです。

「そんな風に感じてはいけない」

「自分のそんな感情は認めるわけにはいかない」

「そんな気持ちになるわけがない」

そんな思考が、素直な感情が意識に表面化するのを無自覚に抑えてしまいます。
その結果、感情は行き場を失いその場に留まり続け、気づいてもらおうとずっとサインを出し続けます。
そのサインが、終わらない感情であったり、身体症状であったり、行動に表れたりします。

抵抗が悪者のようですが、抵抗も私たちの『自我』を守るための防衛機能なのです。
抑えている感情を認めることが、宿主にとって危険だと判断したが故の機能です。

強すぎる悲しみに心が耐えられないかもしれない。
この恐怖を実感したら壊れてしまうかもしれない。
自分がそんな気持ちになるなんてあってはいけないことだ。
この感情を認めると自分の弱さを認めたことになる。

そんな無意識の判断が、認め難い感情を"なかったことに"しようとします。
一時的な防衛手段としては必要なのですが、それが長期に及んだり、抑えていることの弊害が出たりする場合があります。

そんな状態の感情を、『未処理』または『未完了』な感情と呼びます。

もし、いつまでも消えない感情を抱き続けているのだとしたら、きっとそれはまだ感じ切れていないほど大きな感情なのか、もしくは自覚できていない未処理の感情があるのかもしれません。


ここまでの話を一つの例で整理してみましょう。


ある人が仕事でのちょっとしたミスを上司に指摘されました。
理不尽な叱責があったわけでもないが、その人は激しい怒りを感じます。
上司の言葉がいつまでも頭から離れず、友人に愚痴っても、物にあたっても、やけ酒を飲んでも怒りが収まりません。
本人だって頭では理解しています。そんなに怒るほどのことじゃないじゃないか。些細なことじゃないか。
ですが感情はなにをしても消えてくれません。
その怒りの感情と向き合い、深く深く自己洞察をしてみました。
そして気づきました。
怒っていたんじゃない、悲しかったんだ。
その人には昔、不得意なことがありました。そんな自分を恥じ、払拭するために努力して克服できたと自分を誇っていました。
しかし指摘されたミスは、自分の不得意だったことによって起きたミスでした。
認められなかったのです。認めてしまったら、自分が克服できていなかった、努力は無駄だったのだと、自分の自信が崩れてしまうという危機を予感したのです。
その結果無意識のうちに、悲しみという感情を怒りという感情に錯覚することで、危機を回避しようとしたのです。

素直な感情が、『悲しみ』。
認めたくない無意識が、『抵抗』。
素直な気持ちを誤魔化す為の、『怒り』
終わらない怒りが、『未処理な感情のサイン』

と理解することができます。

感情をコントロールするとは、自由に出したり消したりすることではありません。
ちゃんと感じて、ちゃんと全うさせる。
そして本当の感情を、本人にとって害がない形で表出するための方法。

抵抗が起きる原因もたくさんあります。
本人の価値観、心の状態、親の影響、環境的なものなど。

そして感情処理の方法もたくさんあります。
心理療法とは、一人では扱うことが難しい感情を、セラピストが手伝い、安全な形で意識化させるための諸技法になります。

感情に関わることでお悩みでしたら、一度ご相談ください。



垂水俊輔のカウンセリングの詳細やお問い合わせはこちら

❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈
名古屋 栄カウンセリング
❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈