めったに更新していないこのブログですが、今日は珍しく語りたくなりまして。
今日と言ったものの、もう昨日のことになるのですが、5月6日はある方の出生日つまりお誕生日です。
その人とは、ジークムント・フロイド(Sigmund Freud)。
言わずと知れたオーストリアの心理学者・神経病理学者であり精神科医です。
フロイドほど心理学関連で知名度のある人物はいないのではないでしょうか。
心理学以外でも美術史にもよく名前が出てきますしね。
たとえ名前は知らなくても、『エス(イド)』『リビドー』『夢分析』などフロイドの提唱した理論は様々な創作物で登場しており、一度は耳にしたことがあるかと思います。
世界三大心理学者の一人でもあり、精神分析学の創始者でもあるフロイドは、
『無意識』の理論や、
『抑圧』による病理モデル、
現代で言う所の『心的外傷(PTSD)』の概念に通じる病因論、
従来の療法を発展・改良させた『自由連想法』、
など、現代の心理学や精神病理学に多大な貢献をした人物です。
ですがその精神分析も、現代の臨床では活用される機会も減っていますし、そもそもその理論自体が、後の時代ではお弟子さんや共同研究者からも否定的に論じられることも少なくありません。
確かに、学問は日々研究が進むわけですから、いくら当時は画期的だったとはいっても時代と共に色褪せてゆくのはある程度仕方ないことではあるでしょう。
長く定説とされていた節が覆されることは他分野でも往々にしてあることです。
実際私個人としても、性理論の偏向の一部には時代的な背景や彼自身の背景などが濃く影響していて若干偏りを感じるのは事実です。
ですが私はやはり、フロイドの精神分析は現代心理学の礎であり、時代遅れの理論ではなく今も欠かすことのできない基礎の一つだと思います。
むしろ後の反対派の発展も、フロイドがいたからこそ生まれたわけで、批判も含めてフロイドの功績と言えると考えます。
とここまで言うと、まるで私がフロイド原理主義で、今も精神分析しか提供しない心理師のように感じられてしまうかもしれませんが、そうではありません。
むしろ私のカウンセリングのベースは『来談者中心療法』という、フロイトの姿勢と対比されることも多い、カール・ロジャーズという人が創始した心理療法です。
また、『認知療法(認知行動療法)』や『ゲシュタルト療法』、
『プロセス思考心理学』、『交流分析』、ミルトン・エリクソン((Milton Hyland Erickson))のアプローチを利用した『短期療法』『家族療法』なども、相談テーマやクライエントによって有効と思われるものを適宜選択します。
そんな私ですが ―― 節操がないと思われてしまうかもしれませんが ―― 臨床の中で理論として精神分析に頼ることがよくあります。
むしろ、他理論を理解する際に、
「あれ、これって精神分析で言う所のあれと近い概念なのではないかな」
などと基準として使うこともあります。
そしてこれって、私は特に心理学を学んでいるとよく起きる現象として、
違う療法理論だし用語は違うのだけれども、同じことを言っているのではないか?
そう感じることが多いんですが、どうなんでしょう。
私の解釈は、登山ルートのようなもの、と納得しています。
つまり、目的は同じ。山なら頂上で、カウンセリングなら解決や症状改善。
でも頂上に上るルートって一つでなく複数ある。
カウンセリングも、方法は一つでなく複数あって、それが療法の違いなのかな、と。
唯一絶対の万能な心理療法があればよいのですが、私は向き不向きや合う合わないがあると考えます。私の実力不足もあるのでしょうが。
確かに精神分析は、今の時代に合わないところもあれば、同意しかねるところもあります。
ですが、人間心理の理解や治療技法としての基礎大系として、心理臨床を学ぶ者にとって大きな知識と力を与えてくれる偉大なものであり続けると私は思います。
フロイドの出生日に追悼の意を込めて。
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