東日本大震災から10年が経ちました。
今年は10年の節目ということもあり、風化させない・忘れないというテーマで震災を扱うメディアが多いように感じます。
もう10年経つのですね。私は当時から心理臨床の業務に携わっていましたので、メンタルケアの現場で関わらせていただくこともありました。
被災者をはじめ日本中の人々がなにかしら心的な影響を受けていたことを鮮明に覚えています。
防災という観点で言っても、今後への対策としていつまでも忘れてはならない、風化させるべきではないことは明白ですが、10年という月日は人々の悲しみをどのように変えたのでしょうか。
カウンセリングに訪れるクライエントさんには、震災だけに限らず虐待や犯罪被害など過去の出来事に苦しんでいる方々も少なくありません。
そんな方たちが、問題解決や症状の緩和を実感された時に、自身の辛い過去に対しての変化を様々に表現されます。
「過去の出来事の捉え方が変わった」
「縛られていた過去から脱却できた」
「辛い体験を受け入れることが出来た」
そんな、過去と向き合い前へ進むことができた方たちの中で、このような表現をされた方がいました。
「過去の経験は変えられないけれども、思い出にすることができた」
この言葉に私は一つの答えをもらった気がしました。
過去に起きてしまった出来事はもはや変えることのかなわない事実です。
ですが『今ここ』の現在進行形の人生でも変わらぬその苦しみを感じ続けるのではなく、悲しい過去もその人を形成する要素の一つとして、過去を持ちつつ『今ここ』の人生を生きることが、過去の乗り越え方の答えの一つなのではないかと。
とはいえ、10年という歳月は直接被害を受けなかった人たちにとっては過去の出来事として割り切れるものかもしれません。10年ひと昔と言いますし。
ですが、当事者にとっては10年という月日は思い出にするにはまだまだ短すぎる年月でもあるでしょう。
感情の処理・整理は、その大きさや種類によってかかる時間は様々です。
みんなが乗り越えたから私も乗り越えられる、そんな単純なものではありません。
一人ひとり背景が違うように、感情も同じではないのですから。
自分のペースで自分の過去や感情と向き合ってゆけば、きっといつか答えが見つかるものだと思います。
現在も震災の影響を受けている方々の一日も早い回復を心より願います。