2019年5月29日水曜日

川崎・登戸での殺傷事件


またしても、あってはならない痛ましい事件が起きてしまいました。
川崎・登戸での殺傷事件。
私もかつて小田急線で通勤していた頃があったので、登戸駅は馴染みのある場所だけに今回の事件には驚かされました。

このような事件が起きる度、心理職としての無力感を覚えます。
勿論、事件後の被害者や遺族に対してのメンタルケアという面での援助は必要不可欠ですし、大きな役目だと思います。
ですが、事件が『起きてから』ではなく『起きる前』にも心理に携わる我々にはできることがあったのでは、と思うのです。

前提として、加害者を擁護する目的での意見ではありません。
行為自体も許される事ではないですし、行動という結果に移してしまった以上は司法という明確な領域のある案件です。

私が最も問題だと思うのは、未然に防げなかった事です。
加害者には、何かしら理由があってこのような強行に及んだのでしょう。
そしてその理由は、おそらくは被害者達には直接関係のないものだったのでしょう。
つまり、全く見当違いの間違った方法だったという事です。

そこに、未然に防ぐという鍵があるように思います。
加害者の持っていた理由を、それが鬱積であれ、怨恨であれ、絶望であれ、何かしらの疾患による見当識の障害であれ、何にしろその凶行の原因となった理由を、適切な正しい形で処理できる方法もあったのではないかと思うのです。
適切とは、人道的にも、法的にも、社会的にもという意味です。
そうすれば、このような凄惨な事件にならず、加害者も生まれず、何より被害者は生まれなかったのではないか。
そう考えます。

きっとその為には、周囲や専門家のサポートが必要でしょう。
一人では対処できず、解決できず、抱えきれず、抑えることもできない状態の時、誤った極端な選択をしてしまう事は少なくありません。その対象が自分に向くか他者に向くかの違いはあれどもです。
ですが、本当はもっといい選択肢も残されているはずなのです。
一人では考えつかなくても、世の中には様々なサポートが存在します。
行政機関をはじめ地方公共団体、市町村、専門機関、そして家族や周囲の人たち。
そんなサポートが適切に関われていれば、全てではないにしろきっと、極端な間違った選択をしなかった人たちもいたはずです。
その為には、相談対応窓口やセーフティネットの更なる充実と、相談しやすさが必要なのでしょう。

現在でも、官民共に様々な分野で啓蒙や教育、周知を目的とした活動が行われています。
心理の業界なら、心理教育やストレスチェックなどもその一環でしょう。
とはいえまだまだ十分でないというのが現状なのでしょう。
だからこそ、無力を嘆くだけで終わるのではなく、未然に防ぐ為にも、全ての人々へ適切なサポートを知ってもらい、享受してもらえるよう社会を作ってゆく事が必要なのだと思います。


被害に遭われた方たちの早期回復を願うとともに、亡くなられた方たちに対し謹んで哀悼の意を表します。