さて、いま日本で最も勢いのある社会現象といえば、そう『鬼滅の刃』でしょう。
単行本のシリーズ累計発行部数は22巻の時点で1億部を突破。
劇場版は10日間で興行収入が100億円を突破。これは『千と千尋の神隠し』の記録を19年ぶりに超えたそうです。
いやはや凄いですね。
これまでも漫画やアニメが社会現象と呼ばれることはありました。
『新世紀エヴァンゲリオン』『涼宮ハルヒの憂鬱』『魔法少女まどか☆マギカ』『進撃の巨人』などが思いつくところでしょうか。
それ以前の漫画アニメブームとの違いは、あくまで漫画好きの中でのブームにとどまらず、一般メディアで紹介され幅広い人気となるといったところでしょうか。
そんな鬼滅の刃ですが、私も連載当時から読んでいました。
先に言っておくと、私自身ファンですし、文句なく面白い作品だと思います。
でもね、どうして数ある漫画の中でこの作品はここまで人気となっているのでしょう。
その辺りを個人的に考えてみました。
まず、世界観やストーリーですが。
確かに『大正時代』『日本刀』『バトルもの』『正義の味方組織』あたりは漫画ファンの好む要素ではあります。
ですが、連載誌である週刊少年ジャンプには似たプロットの作品はたくさんあり、人気漫画になっているものもあれば、一部にしか人気が出ずに残念ながら打ち切りの憂き目にあってしまった作品も数知れずあります。
実際、大正明治あたりが舞台で日本刀で敵と戦うというストーリーは比較的よくあるジャンルなのではないかとすら思います。
それら打ち切り漫画と『鬼滅の刃』の違いは何だったのでしょうか。
理由① 友情・努力・勝利
昨今の漫画の特徴に、努力をしない主人公というものがあります。ライトノベル作品に代表される、初めから強い主人公が労せず敵を倒して賞賛される、という展開を好む層が多いとされ、修行シーンはファンが嫌がるとまで言われるそうです。
それに比べて鬼滅の刃は、過酷な修行シーンを前面に押し出します。
そして仲間たちと力を合わせることで敵を打倒します。
これは、少年ジャンプの三大原則とされるもので、同じく長い人気作品である『ワンピース』にも共通する要素でもあります。
時代が努力を再び求めているのかもしれません。
理由② アニメの制作会社
鬼滅の刃はアニメから一気に人気に火が付いたとも言われています。確かに原作の描写を映像美と評されるまで昇華させた製作会社の功績も大きいでしょう。
似た事例はこれまでもあって、『けいおん』という深夜アニメながら高い人気を誇った作品も、原作の映像化によって成功した例です。
とはいえ、原作に力がなければいくらアニメの出来が良くてもここまでの人気にはならなかったと考えると、やはり原作自体に大きな魅力があるのでしょう。
理由③ 自粛生活の影響
コロナ禍でレジャー全般に制限がかかっている中で、家で気軽に見れるアニメ、読める漫画であり、なおかつそれが多くの人と共感できる流行であったこと。
人は流行を好みます。タピオカやポケモンGOのように、皆が好きなものは無条件で好きになってしまいます。特にSNSが一般化する現代では流行を共有するというのは大きな社会性ともなります。時には同調圧力のようにネガティブな面もありますが。
とはいえ、皆と共有したい!と渇望しているときに「これが人気だよ!」と紹介されれば平時以上に飛びつく人も多くなるのは当然でしょう。
理由④ 日本人の民話的発想
日本では古来より飢饉や疫病など目に見えない災いを『鬼』として扱ってきました。
そして現代は未曽有のウイルス危機に瀕しています。
そこで、鬼(疫病)を倒す物語が我々日本人の集合的無意識に好まれたのではないでしょうか。厳密には吸血鬼ですが、人に仇なす鬼には違いありませんし。
つまり、この時代だからこそ求められていたものだったのではないかと。
さて、長々と個人的な考察にお付き合い頂きありがとうございました。
これだけ長くなっておいて今更ですが、人気作品には小難しい理由なんて関係ない『熱量』『凄み』のようなものがあると思います。
正直、鬼滅の刃は作画は味はありますが癖もあり万人受けするとは思いませんでした。ストーリーも台詞回しも別段目新しいものではなかったと思います。
ですが、読者を引き込む魅力は私も感じます。
色々と理由を並べましたが、あくまで人気が出た理由であって、面白い理由ではありません。
むしろ、面白いものでも人気に繋がらない作品も多数ある中で、ちゃんと面白い作品が評価されたというのは喜ぶべきことなのでしょうね。
最後に私の好きなキャラクターは岩柱・悲鳴嶼行冥さんです。
あの優しさと厳しさに裏打ちされた頼もしさに憧れるわぁ。
あと継国縁壱さんと宇髄天元さんも好き。