元気のない人を見ると励ましたくなってしまう。
そんな人多いんじゃないでしょうか。
それはとても尊い、立派な優しさだと思います。
元気のない、落ち込んでいる人を見ると、つい元気になって欲しくて励ましてしまいます。
しかしそれは要注意。
あなたのそんな優しさが時に相手を追い込んでしまうこともあるのです。
落ち込んでいる人を励ます時、どんな言葉をかけますか。
①「落ち込んでいても何も良くはならないよ! さぁ、笑って! 」
②「君が落ち込んでいると僕まで悲しくなってくるよ……。僕のためにも元気になって欲しい」
③「僕が君の悩みを解決してあげるよ。さぁ、僕に任せてなんでも頼って! 」
どれも一見魅力的な言葉です。
優しさや頼もしさが伝わってくる気がしますね。
……そう。『気がする』だけかもしれません。
①は落ち込んでいる気分を強引に前向きにしようとしています。
結果、相手は笑うかもしれませんが、落ち込んだ悲しい気持ちが消えるわけではありません。
笑えと言われたから笑っているに過ぎず、逆に言うと悲しい、落ち込んだ気持ちを否定されています。
その悲しい気持ちはどこに行ってしまうのでしょうね。
どこにも行きません、その人の心の奥に追いやられて、ずっと残り続けてしまいます。
②は相手の為を想っての言葉のようですが、実は自分が悲しい気持ちになりたくないだけです。
目の前に悲しんでいる人がいるのに何もできない自分が苦しいから、自分のために無理に空元気を出して、と言っているようなものです。
これもやはり相手の悲しい気持ちを否定して、心の深い部分に押し込めさせているだけです。
③はどうでしょう。 頼りがいがあって、もうこの人に全部任せてしまおう。そんな気持ちにさせてくれます。
でもそれって、結局は自分が相手の気持を全部背負ってしまおうとしているだけなんですよね。
しかも、人は他人の気持ちなんて背負えません。そんな責任は負えません。
だって、自分の気持はどうあがいても自分でケリをつけるしかないのですから。
もっと言えば、この言葉は裏を返すと
「あなたは自分で解決する能力がないから、僕が助けてあげるよ」
相手の力を信じずに見くびっているから出る言葉です。
難しいですね、どれも正解ではないんですよ。
わかりやすくするためにあえて極端にきつい言葉を使いましたが、人を励ますというのはそれほど難しいのです。
むしろ、『励ます』なんていう発想自体おこがましいかもしれませんね。
ではカウンセリングではどうするか。
落ち込んで悲しんでいるその人の気持ちを、ただ受け止めます。
だって、どう誤魔化しても悲しい気持ちがあるのなら、いっそきちんと悲しんで、泣いて、気持ちを感じきるしかないからです。
勿論それで終わりじゃありませんよ。
(おかしな言い回しですが)悲しみを満足行くまで感じきった時、人は次に進めるのです。
そしてその時、人は自分の力で自分を励まし、救うことができます。
我々カウンセラーは、そんな人の力を信じて、自分で良くなっていくお手伝いをします。
自分を助けられるのは自分だけ。
単純なことですがとても難しく、一人でそれに気づくことは困難です。
そのお手伝いのために、数えきれない専門技術や知識をフル活用してその人を援助します。
カウンセラーとしての経験を積めば積むほど、人の強さを目の当たりにして、ますます人を信じる気持ちが強くなっていくのがわかります。