2020年4月21日火曜日

100日後に死ぬワニに我々はなぜ興味を惹かれたのか



さて、今日は少し前に話題になったワニについて。
『100日後に死ぬワニ』をご存じでしょうか。
twitterで公開された日めくり形式の漫画で、「死まであと○日」と明示された作中のワニの100日間を、カウントダウン形式で描かれたたwebコンテンツです。
徐々に話題になり、最終回は30万を超える「いいね」を獲得し、Twitterのトレンドで世界1位となったとか。

最終回後のグッズ展開の速さなどから商売方法についての批判や憶測もあるようですが、どこが絡んでいるのかは真実はわからないですから、そこに関しては特に触れるつもりはありません。

どうしてこの企画はこれほど我々の心をつかんだのでしょうか。
(しつこいようですが、仕組まれた流行という説は確証がないので特に触れません)

『死』にはネガティブなイメージがあり、一般的にはあまり好まれる題材ではないはずです。
ですが、一説では人間は本来『死』に惹かれる一面を持っているとされます。

フロイドは人間の快楽原則を『死の欲動(タナトス)』と『生の欲動(エロス)』の二つがあるとしました。
とはいえフロイドは、一般的な『死』のイメージはあくまで比喩的なものであり、非生命に向かう無意識的な自己破壊・自己処罰傾向が人を神経症に向かわせる要因である、として説明をしたものです。

私なりの解釈と要約をするなら、生と死は表裏一体のものであり、愛もあれば攻撃性もあり、前向きな気持ちもあれば破滅願望も同居している、というような感じですかね。
本当にすごく乱暴に解釈してますが。

写真家のアラーキーこと荒木経惟がよく『タナトスとエロス』をテーマとしていました。
私は当時子供ながらに、何やら混合したリビドーを感じ取っていた気もします。

話を戻しましょう。
100日後に死ぬというある意味衝撃的なタイトルは、我々が本来持ち合わせつつも、無意識のうちに禁忌としている死の欲動が反応してしまう刺激だったのではないでしょうか。
それは決して珍しことではなく、我々は刺激的なものや怖いものを娯楽として認識するという一面があります。
最近はあまり過激的なものは控えられるようになりましたが、『衝撃映像』なる事故や事件を紹介するテレビ番組があります。
きっと怖い結果になるとわかっていても抗えず危険な行動をしてしまう心理もあります。
生と死は表裏一体であり両価値とも言えるのかもしれません。
生きているから死は忌むものであり、死を忌むからこそ生が美しい。

あくまで一例ですが、私のケースの中で自傷行為をする方はこう言っていました。
「死を意識することで生を実感できる」
もちろんそれは正しい生の確かめ方ではないことは勿論ですが、そのような価値観を持つ方は少なくはないという例です。
死に対して興味や執着があること自体は悪いことではありません。
なぜならそれは、同時に生に対しての執着や実感を持っているということですから。

『100日後に死ぬワニ』が我々を惹きつけた理由の一つには、生をもっと感じたいという我々の欲動がもたらしたものなのかもしれません。


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