2021年1月4日月曜日

中年の危機



人生を段階的に分けるという考え方があります。
心理学でも発達心理学という分野があり、発達というと子どもの成長というイメージが強いかもしれませんが(乳幼児発達検診とかありますしね)、成人後も含めて人生は生涯を通して変化・成長が続くという考え方が近年では一般的です。

乳児期から老年期まで8つに分けたり、もう少し大まかに4つに分けたりと、様々な研究者が説を唱えていますが、その中で30代後半から40歳あたりの青年から中年にさしかかる転換期を『中年の危機』として、捉える説があります。

中年期は、身体的な加齢による衰え、ライフサイクルの変化、仕事面での出来事など、心理的な危機が起こりがちで、うつ病等の危機に陥りがちな年代ということです。
程度の差はあれども、実に80%の人がこの中年の危機を様々な形で経験するとされています。

青年期までの人生はピークに向かって上昇しますが、中年期以降は喪失やその喪失を緩やかにするための維持が必要になっていきます。
青年の『思春期』になぞらえて『思秋期』とも呼ばれ、春から秋へと一年の終わりが、つまり人生の終わりが見えてくる時期ということですね。
日本でも、男性42歳、女性33歳・37歳の『厄年』という概念が丁度一致しているのも興味深いです。

この『中年の危機』を上手く乗り越えられないと、うつ病などの心理的な問題だけでなく、その後の人生の充実にも問題が起こりかねないとされます。
具体的には、自分のこれまでの人生の価値を認められなかったり、これからの人生への期待を持てなかったりと現実的な生活への支障が危惧されます。

そんな『中年の危機』を乗り越えるにはどのような方法があるのでしょうか。
もちろん、危機の要因は人それぞれなので、唯一絶対の方法という都合の良いものはないのですが、それでも共通していえるレジリエンスはあります。
(レジリエンスとは、人が困難や逆境の中にあっても心が折れることなく、柔軟に生き延びようとする力・要因のこと)

それは、葛藤を認めること。
中年期になると、これまでよりさらにシビアな葛藤を迫られます。
『老い』『死』『別れ』などが主でしょうね。それら葛藤は辛いものですが、目を背けることのできない現実です。
だからと言って、立ち向かえ!などと厳しいことを言うわけではありません。葛藤の苦悩をなかったことにして心の深くに押し込めて我慢してしまうのではなく、葛藤している自分自身を許してあげることです。

それは、自分の人生を振り返り、ありのままを受け容れることとも通じるでしょう。
これからの人生にあたり、これまで得てきたもの、技術や人脈、物質的なものも含むそれらの資源をこれからの人生にどのように活かしてゆくか、また老いとともに失ってゆくものを如何に維持してゆくか、中には諦めて手放さなければならない苦渋の決断を求められることもあるでしょう。
それら変化を様々な方向性から検討し、重きを置くものや手放すもの、形を変えてゆくものを自分の意志で選択し、自分にとっての納得や落としどころを見つけてゆくこと。

つまり自分の人生そのものと向き合うという心構えを整えることで、乗り越えることができると考えられます。

その為には周囲のサポートが必要になります。
家族や仲間たちや専門家の助けを借り、『これまで』と『これから』を繋いでゆく作業が効果的です。子供が成長する為に大人のサポートが必要なように、大人だって成長する為には助けが要るのです。
どうか、一人で乗り越えようとせずに周囲の力を借りて中年期を乗り越えましょう。


垂水俊輔のカウンセリングの詳細やお問い合わせはこちら
❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈
名古屋 栄カウンセリング
❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈