2016年4月14日木曜日
シガテラと聞いて何を連想するか
ネットでニュースを見ていたら、『バラハタ』という有毒魚が築地市場で販売されていた、という記事を見つけました。
どこかで聞いたことのある名前の魚だと思い調べてみたところ、この『バタハラ』という魚の有する可能性のある毒の名前が『シガテラ』というそうです。
『シガテラ』という名前を聞いて納得。
漫画好きな方なら心当たりある方もいるのではないでしょうか。
『行け!稲中卓球部』というギャグ漫画の作者、古谷実さんの作品の中に『シガテラ』というタイトルがあります。
私、この古谷実という漫画家が好きでして。
デビューから数作は、ギャグ漫画家だったのですが、ある時を境に作風がブラックなものへと方向転換しました。
まぁ、もともとギャグの中でも、不道徳でお下品な作風ではありましたし、ある種の陰湿さや閉塞感のある、決して明るいギャグ漫画ではなかったのですが。
それでもここ数作は、ギャグ要素はほとんどなくなり、日常から非日常へと転落してゆく主人公の様子や心理描写を、犯罪や暴力といった反社会的な角度から描く作風が定着しています。
稲中卓球部はアニメ化もされるほど人気も高かったですし、実際私も好きでした。
だからこそ、後期古谷実(私が勝手に名づけたブッラク作風になって以降の意味)に対して批判的な意見を持っている方も多いようです。
でもね、私はともすれば、ギャグがメインだった頃よりも、今の作風の方が好みだったりします。
日常と非日常の曖昧な境界線。
まさに『シガテラ』の表すがごとく毒に侵されてゆくように日常が侵食されてゆく描写。
これが非常に繊細に、かつ現実的に、身近なものとして、そして同時にギャグ漫画のような非現実的に。
このバランスが絶妙なんですね。
「ありそうで、なさそうな、でもやっぱりあるかもしれない……いやいやないよこれは」
そんな風に、陰惨で不幸で怖い物語がまるでギャグ漫画のように描かれています。
エンターテイメント。その中でもファンタジー要素の強いものの魅力とは、
『現実的』な『非現実感』だと思っています。
ホラーだってそうですね。
ただ怖いよりも、身近に感じられる恐怖の方がより面白さが増します。
つまり、古谷実作品はギャグ路線でもリアル(ブラック)路線でも、現実と非現実のギャップを絶妙にバランスよく描くところに漫画としての面白さがある。
そんな結論で、この話題を終えたいと思います。
心理に関係ありそうで、最期までただの私の趣味嗜好の主張という、毒にも薬にもならない記事でした。
これもある意味ギャップといえるのか?