2015年7月13日月曜日

自分が怪物になってしまうという疾患















今日は少し珍しい精神疾患について触れようかと思います。
『ウェンディゴ症候群』と呼ばれているこの疾患。あまり耳にしない名前だと思います。
それもそのはず。この『ウェンディゴ症候群』は『文化依存症候群』のなかの精神疾患のひとつとして知られています。
一つずつ説明していきましょう。
まず『文化依存症候群』とは、ある地域、民族、文化環境において発生しやすい精神疾患の事を指します。
つまり、世界共通の疾患でなく、特定の国や地域だけに見られる疾患。
日本にだってあります。
『対人恐怖症』はあがり症とも呼ばれる、神経症の一種ですが、その発病率は日本において群を抜いて多く、日本で顕著な文化依存症候群とされ、海外においてもそのまま「Taijin kyofusho」と呼称されています。
日本特有の『恥』の概念がこの疾患には大きく関わっていると言われています。

そんな『文化依存症候群』。
そして今回のテーマである『ウィンディゴ症候群』は北アメリカの一部のネイティブアメリカンなど、ごく限定された部族にのみ見られる精神疾患の症状です。
元々は『ウィンディゴ』は一部のネイティブアメリカンに伝わる伝説上の精霊あるいは魔物の名前なのですが、その『ウィンディゴ』に取り憑かれてしまったと思い込み、「このままではウィンディゴに変化してしまう」という強い恐怖と不安感と共に、次第に周りの人が食べ物に見える様になり、猛烈に人肉が食べたくなる、という想像しただけでも怖い症状が『ウィンディゴ症候群』の特徴です。

現代ではその原因も大部分は解明されており、発症が冬季に集中していることから、食料の乏しい時期のビタミンが不足からくる精神状態の変調というのが通説です。

ここで興味深いのが、ビタミン不足による精神失調は世界各地にあるにもかかわらず、『ウィンディゴ』信仰のある地域に限りそのような症状が出るということ。
これは、疾患による精神の変調(失調)と、その人の信仰する価値観が密接に絡み合っているということ。
逆に言うと、『文化』『疾患』を作っているともいえる。

同じようなものとして、日本古来のオカルト現象である『狐憑き』も文化特有の疾患として挙げられるでしょう。

以前、このような疑問をテーマに話し合ったことがあります。
幻聴や幻覚を主な症状として『統合失調症』を発症した人が、無人島で暮らしている。
他者が一人も存在しない環境で、
つまり幻聴や幻覚を現実ではないと観測する他者が存在しない環境で、
彼が精神疾患だといえるのだろうか、と。

精神疾患は人間関係を通して日常生活の不具合が問題となるものが大多数です。
『他者』との関わりとは言い換えれば『文化』との関わり。
文化によって生み出される疾患もあれば、
神と通じるものとしてのシャーマンという存在のように、また別の文化では『疾患』でなく『特性』として受け入れられることもあるのではないでしょうか。

常識や正常という概念はそこに住む人が決めていくものなのですね。たるみでした。


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